今、街のコートで最も華やかにプレーしているのは誰?
それは、ディアドラを身にまとったプレーヤーたち。黒とピンクの印象的なデザインや、蛍光色を取り入れたカラーリングなど、それまでのテニスアパレルの概念を、ここ数年で一気に覆した。かつてはボルグ、ビラス、ベッカー、クエルテンらをサポートし、今は日本若手の注目株であるダニエル太郎、尾﨑里紗と契約を交わす。ディアドラ・ジャパンの平井氏と、テニパラ野村氏によるディアドラ今昔物語をお届け!
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【ご来店15回目】「デザイン性と機能性の融合。ディアドラ今昔物語」
ディアドラ・ジャパンの平井雅之氏(右)と、
テニパラの野村智毅氏(以下敬称略)
世界中の注目を集めた97年全仏オープン
00年に2度目の全仏優勝を果たした時に履いていた
クエルテンのシューズ。今もレッドクレーが付着。
彼の飄々としたフットワークを彷彿とさせる
カフェルニコフが96年全仏優勝。
その翌年、ディアドラ対決を果たし、世界ランキング66位の
ノーシードだったクエルテン(下)が準々決勝に勝利すると
そのまま優勝。ディアドラを世に広く知らしめた
【ディアドラ・ジャパン平井雅之(以下、D平井)】
ディアドラは、1948年に創立したブランドです。イタリアのベニスにある山のふもとにはシューズメーカーがたくさんありますが、そのひとつとして登山靴の製造からスタートしました。
【テニスパラダイス野村智毅(以下、テニパラ野村)】
ディアドラといえば、ボルグ、ビラス、ベッカー、イバニセビッチにクーリエ、女子だとカプリアティなど、時代を築いたそうそうたるスター選手が着用していた印象がありますね。
【D平井】
全これはクエルテンが全仏オープンで優勝した時に履いていたシューズです(といって前触れもなく差し出す)。
【テニパラ野村】
これ、素手で触っていいんですか? 普通、ビンテージを扱う時には手袋とかしますけど・・・。
【D平井】
大丈夫です。00年、2回目の全仏優勝時のシューズなのですが、彼の要望で、2つのシューズのアッパーをミックスしたユニークな構造になっているんですよ。
【テニパラ野村】
いかにもハサミで切り落としたような手作りっぽい痕跡も確認できますね。
【D平井】
当時はパーツや素材が未熟で、ねじれや横ブレを防ぐためにミッドカットのデザインが普及していました。このシューズは内側だけが高くなっているのですが、実は機能性で言えばこれがミッドカットの理想形です。ただ、左右非対称のデザインなので、一般にこういうシューズはあまり売れないんですけど・・・。
【テニパラ野村】
クエルテンといえば、97年の初優勝がセンセーショナルでした。その前年覇者がカフェルニコフで、彼もディアドラ契約プレーヤーでしたね。
【D平井】
そして翌年、準々決勝で2人がともに、青と黄色のウェア同士で対戦したのです。一方はロシアの堅物で、一方は超無名の伏兵。正直私たちもあまりチェックしていなかった存在でした(笑)。
【テニパラ野村】
そっくりなウェアをまとった2人でしたが、カフェルニコフはシャツインで、クエルテンはシャツアウト。着こなしに、2人の性格が現れていた面白い対戦でしたね。
【D平井】
ディアドラの選手が獲得したグランドスラムのタイトル数は、全仏が一番多くて10個です。この2人以外にも、ボルグやビラス、クーリエのほか、コリアとのアルゼンチン対決を制したガウディオも、ディアドラでした。
本当に好きでディアドラを選んだダニエル太郎
ダニエル太郎や尾﨑里紗などの若手選手とプロダクト契約を
結ぶのは、「ともに成長していきたい思いがあるから」
(ディアドラ・ジャパン平井氏)
【D平井】
もともと登山靴のメーカーでしたが、アスリートたちとの関係が構築されるにつれ、プレーヤーが求める物を作る過程で開発力が高まっていきました。モータースポーツのシューズなども手掛けていたのですが、F1のアイルトン・セナがディアドラを履いていたのに憧れて、同じブラジルのクエルテンも興味を示したといいます。
【テニパラ野村】
日本ではダニエル太郎もディアドラを履き始めました。他の大手メーカーからも誘いはあったと思うのですが、ディアドラを選んでくれたのはうれしかったですね。
【D平井】
もともと13~14歳くらいの時に、彼はディアドラを履いていたんです。その後スペインへテニス留学した時に、ディアドラが向こうにはなかったのです。大きな資本で展開しているわけではないので行き届いていない地域もありますから。
【テニパラ野村】
その後、注目を集め始めてから、ディアドラと契約を結んだのは、お金ではなく、本当に好きなブランドを彼が選んだからなのでしょうね。彼は軽いシューズを好んでいるようですが、ちょうどそのニーズがディアドラの『スピードプロ』と合致したのでしょうか?
【D平井】
ダニエル太郎は既製品を履いています。プロの中には、自分の足型を取って専用ラストを作り、オリジナルシューズをリクエストするプレーヤーもいますが、彼は日本のショップで売られているのと同じシューズでプレーしているのです。
【テニパラ野村】
それだけ既製品の完成度が高いということでしょうね。
伝統のカンガルー革や一体型。でも、中身は進化している!
【テニパラ野村】
ディアドラのシューズといえば、イタリアブランドのファッション性が人気であるのと同時に、カンガルーレザーや一体成型によるこだわりの物作りも高く評価されています。
【D平井】
カンガルーレザーは、まずサッカーのスパイクで取り入れられました。直接足でボールを蹴るスポーツですから、選手たちもこだわりが強いのです。パーツが少ない中でフットワークをサポートする必要があるのです。カンガルーレザーは、足を包み込むフィット感を持ちながら、復元力にも優れます。サッカーで培われたテクノロジーですが、現在テニスで扱っているのはディアドラが唯一です。
【テニパラ野村】
アッパーとベロがワンユニットになっている一体成型は独特なフィット感があり、足入れした瞬間はタイトに感じられるかもしれません。しかしうちのユーザーは馴染むと「これ以外は履けない!」と言いますね。
【D平井】
一体型を作り出したのは93年頃。ベッカーやイバニセビッチらが履いていたシューズあたりから始まりました。ディアドラが20年以上続けている伝統的な製法です。
【テニパラ野村】
でも、中身が変わっていないかといえば、そうじゃないんですよね。モデルチェンジは多くないですが、マイナーチェンジを繰り返して少しずつ良くなっていくのがディアドラの物作りの印象です。
【D平井】
イタリアの本社には、昔のモデルの型紙や木型が残り、それを使って復刻モデルを作るといった、伝統を重んじた職人文化があります。もちろん新製品も作りますが、同じシューズ名であっても、少しずつ改良を重ね、中身を進化させていくのがディアドラのやり方です。
【テニパラ野村】
「新製品を作りました!」って次から次へと出せば、確かに話題性はあるかもしれません。しかしそのような作り方をしていては良い物は生まれない。ディアドラが愛されるのは、ひとつの製品を大切に育てていこうとする実直な物作りの姿勢にあるのですね。
【D平井】
日本においては、専門店さんはもちろん、草トーナメントや、ジュニアの大会等でブース販売をしています。そうすると「この前の○○が良かった」逆に「悪かった」など、生の声をお聞きすることができます。それを商品作りに生かすことが私たちのポリシーです。
リピート率がハイアベレージ!
日本市場は期待されています
「イタリア本国で日本市場は期待されている。
テニス部門は、世界の売上の50%以上を日本市場が占める」
と平井氏。
こだわるユーザーに愛されるブランドです
「どこでも売っていて、使い手が誰でもいいと
いうシューズではない。こだわるユーザーにこそ愛される
のがディアドラ」(テニパラ野村氏)
【D平井】
イタリア本国の社長も、日本市場にはとても期待しています。テニパラさんをはじめとするテニス専門店の数が世界一多く、ユーザーの意識も高い。ですから日本市場で認められれば、グローバルでも通用するという認識になっています。だからこそ、ディアドラ独自のこだわりを生かした物作りで、より多くの人にファンになってほしいのです。
【テニパラ野村】
広く浅くではなく、こだわりのある人に選ばれるのがディアドラです。私たちショップも、ユーザーの声を聞いてメーカーにフィードバックできるから、安心してディアドラのシューズをお薦めすることができます。
【D平井】
量販店にも卸していますが、特にハイエンドモデルをお買い上げいただく際には、専門的な知識を持つプロショップの店員さんによるアドバイスが必須です。ユーザーに合うシューズを薦めてもらってご満足いただければ、リピーターになってもらえるチャンスだと思うのです。
【テニパラ野村】
確かにディアドラは、リピート率がとても高いですよ。他メーカーでは、選手使用モデルといえば響きはいいかもしれませんが、それだけで飛びつくと結局自分に合わないので1回限りの買い物になるというケースも少なくありません。
【D平井】
専門店さんは地域との密着や、ジュニア、高校生プレーヤーとしっかりつながっており、ギアに関するアドバイスを小さい頃から提供しますから、商品選びに対する意識も自然と高くなるのでしょうね。
テニス界への貢献がこれからの目標!
DIADORA イタリア本社
ベネツィアから北へ30㎞ほど離れた郊外にあるイタリア
本社。社内にはショールームがあり、ディアドラの歴史探訪
ができる。
テニスのボルグ、サッカーのバッジョ、F1のセナなど、
競技の枠を超えた歴代レジェンドのシューズを展示する
スペースもある
創業時からの木型や機械も展示されている
【テニパラ野村】
あと、ディアドラといえばやっぱりカラーリングですね。今までのテニスアパレルの概念を覆しました。
【D平井】
特にこだわっているところです。20年ほど前から白以外を展開し始めました。試合会場の現場でアンケートを取ると、選ばれる理由には、デザイン性がトップにきます。
【テニパラ野村】
ところが最近は、またホワイトを打ち出しましたね。これはコアなディアドラファンには喜ばれると思います。
【D平井】
原点回帰という意味もあります。流れを先取る個性的なプロダクトで魅力を打ち出すとともに、楽天オープンのサプライヤー活動などを通じてテニス界に貢献していくのがこれからの目標です。そのためには、専門店をはじめ、選手、メディアの皆さんとともに歩んでいきたい思いがあります。
【テニパラ野村】
私もより多くの人に製品の魅力を一層広く知ってもらい、選んでもらいたいと、いちディアドラファンとして願っています。
スポーツシューズ以外にも、タウンユースとして
ファッショナブルに履きこなせる「ライフスタイル」や、
名機の木型を使い現代版として復刻させた
「ヘリテージ」なども扱う
楽天ジャパンオープンでは、ボールパーソンや審判らの
足元をしっかり支える
ポレガート・チェアマンより日本のテニスプレーヤーの皆さんへ
ディアドラはイタリアのスポーツ界において、すでに60年という長い歴史を刻んでいます。イタリアのスタイルが日本人に評価されるのはとてもうれしいことです。
私たちが目指すテクノロジーとは、研究所で行なわれるテストだけではなく、時に生活を楽しくするプラスアルファであったり、消費者のパフォーマンスの向上であったりもするのです。ですから、私たちは研究・リサーチに力を注ぎ、日本の個性的なマーケットを意識して、イタリアンスタイルとテクノロジーの融合という商品開発を進めてきました。
世界のマーケットで勝つためには、まず、日本のマーケットで勝つ必要があるのです。皆様にはこの場をお借りして本当にありがとうと言いたいです。商品企画力と、築いてきたブランド力をもって、ディアドラはこれからも勝ち続けていきたいです。
ディアドラ自社工場
新設されたディアドラの本社工場では、ライフスタイルシューズや、サッカースパイクでMADE IN ITALYの生産が再開された。イタリアの熟練の職人さんたちが、まさに手間と時間をしっかりかけて、一足ずつ丁寧に仕上げている。
【PRESENT!】
新発売のシューズ『スピードスター』と『スピードプロ』を、男女各1名様にプレゼント。
スマッシュ2015年9月号95ページの「応募方法」を参照の上、希望商品、サイズを明記し、スマッシュ2015年9月号「ディアドラシューズ」係まで。
SPEEDSTAR K
内張りの素材やベロの厚み、アウトソールなどの
マイナーチェンジを重ねて打ち出された最進化型。
異素材のハイブリッドで、しっかりと柔らかさがマッチしている
SPEEDPRO EVO
アッパーに強度の高いマイクロインジェクション加工を採用。
マスライドフットワークなど多様化に合わせ、
重心をシューズ前足部にシフトさせた2ピース構造が特徴だ
ディアドラ・ジャパン
「ディアドラ」とはギリシア語で「神より賜れし至上の贈り
もの」の意。ロゴマークは、鷹が水面の獲物を捉えて上昇
するさまを表している
楽天ジャパンオープンフットウェアの
オフィシャルスポンサーを8年連続で務める
●住所:
〒600-8227京都市下京区堀川通七条上ル菱屋町145(本社)
〒151-0051東京都渋谷区千駄ヶ谷2-9-11(東京事務所)
●電話番号:
075-371-1922(本社)
03-5770-3040(東京事務所)
●ウェブサイト:http://www.diadora.co.jp
●ディアドラブランド製品の企画・製造・販売
取材/吉田正広
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